外壁の一部が浮いている、窓まわりから雨が入る、看板を外したい。どれも高いところの工事で、見積を取ると足場の費用が大きく乗ってきます。そこで候補に挙がるのが、足場を組まずにロープで降りて作業するロープアクセスです。
この記事では、ロープアクセスの費用を作業ごとの単価で示し、そのうえで足場より安くなる工事と、そうでもない工事の分かれ目を、広島で施工している立場から整理します。金額は2026年10月時点の目安です。
- 単価は作業そのものの費用で、ロープの設置や養生、諸経費は別にかかる
- 小さな工事は単価の合計ではなく、1日あたりの最低料金で決まる
- 1か所だけの補修や調査は、足場より大きく安くなりやすい
- 外壁全面の塗装のような「面」の工事は、足場と費用が近づく
目次
ロープアクセスの作業別の単価
当社がお見積りの目安にしている単価です(税込)。
| 作業 | 目安(税込) |
|---|---|
| 外壁の打診調査 | 220〜330円/㎡ |
| 外壁の塗装 | 2,200〜2,750円/㎡ |
| 屋根・配管の塗装 | 2,750〜3,300円/㎡ |
| シーリングの打ち替え(目地・ひび割れ) | 1,100〜2,200円/m |
| 窓まわりのシーリング打ち替え | 2,200円〜/m |
| 浮き・爆裂部の撤去 | 16,500円/㎡(撤去した面積で精算) |
| 浮きの固定(エポキシ樹脂注入) | 1穴 約550円 |
| タイルの部分交換 | 1枚 550〜2,200円(広い範囲は 6,600〜7,700円/㎡) |
| 高圧洗浄 | 1,100円前後/㎡ |
| 撥水剤の塗布 | 1,650〜2,200円/㎡ |
| 屋上の防水(ウレタン) | 4,400〜11,000円/㎡ |
| ガラス清掃 | 約165円/㎡ |
同じ外壁塗装でも、防水を目的にした厚い塗膜の仕様や、下地の傷みが大きい壁は手間が変わるため、単価ではなく工程を積み上げてお見積りします。
単価のほかにかかる費用
見積書を見たときに「単価×面積」より高く感じるのは、次の費用が別に乗るためです。
- ロープの設置
屋上で支点を取り、作業用とバックアップ用の2本を下ろします。降りる位置を変えるたびに盛り替えが要るため、横に長い建物ほど回数が増えます。 - 養生
窓や設備を汚さないための養生と、塗装や洗浄のときに周囲へ飛ばさないための養生です。 - 安全監視員
真下を人や車が通る現場では、作業中に下で通行を見る人を立てます。 - 道路使用許可
歩道や車道の上で作業する場合の申請です。足場と違い、道路に構造物を立てないので占用許可までは要りません。 - 報告書・諸経費
調査結果や施工前後の写真をまとめた報告書、現場管理の費用です。
小さな工事は「1日いくら」で決まる
当社では、作業は1日あたり11万円(税込)からお受けしています。塗装20㎡なら単価の合計は5万円前後ですが、ロープの設置から撤収までの手間は面積が小さくても変わらないため、この最低料金が適用されます。
実際の例では、7階建てビルの7階で、外壁を貫通するダクトの隙間を止水しパイプフードを取り付けた工事が、現場での作業3時間ほどで、費用もこの最低料金の範囲に収まりました。足場や高所作業車を手配していれば、仮設だけでこの金額を超えます。
足場より安くなる工事、そうでもない工事
安くなりやすいのは「点」の工事
外壁の浮きや爆裂の補修、窓まわりや貫通部の止水、看板の撤去、外壁の打診調査。どれも、建物のあちこちに散らばった箇所へ手を届かせる工事です。足場はこうした工事でも建物を囲う一式が必要ですが、ロープなら必要な場所にだけ降ります。
三方が道路に面した9階建てマンションでは、他社2社の見積書で足場の仮設費用だけで約300万〜600万円とされていた外壁補修を、足場を組まずに行いました。
差が縮まるのは「面」の工事
外壁を全面塗り替えるような工事は、面積×工程数の作業です。広い面を何度も塗る工事では、足場の上で安定して作業できるほうが1日に進む量が多く、そのぶん仮設費の差を埋めてきます。当社で外壁全面の塗装を試算した際も、ロープと足場の総額は同じくらいの水準でした。
それでもロープを選ぶ理由が残るのは、次のような場合です。
- 隣地や前面道路に足場を立てられない、または借りる費用が高い
- 1階が店舗で、足場やシートで入口をふさぎたくない
- 居住者がいる建物で、長期間シートで窓を覆いたくない
- 面ごとに区切って、年度を分けて進めたい
計算してみる:外壁の打診調査の場合
外壁の打診調査(タイルやモルタルの浮きを、叩いた音で調べる調査)は、建物の用途や規模によっては10年ごとに義務づけられています。外壁面積2,000㎡の建物なら、単価の部分は次のとおりです。
- 2,000㎡ × 220〜330円 = 44万〜66万円
- これに報告書・安全対策・諸経費が加わる
足場を組んで調べる場合は、ここに建物を囲う仮設の費用が丸ごと乗ります。調査だけのために足場を組むことはまずないため、調査はロープ、補修は調査結果を見てから工法を選ぶという順番が合理的です。
費用を抑えるために、依頼する側ができること
- 建物の写真と住所を先に送る
外観の写真と所在地が分かれば、現地に伺う前に概算をお伝えできます。足場がよいのかロープがよいのかも、この段階でおおよそ判断できます。 - 気になる箇所をまとめて頼む
ロープの設置は1回ごとにかかるため、止水と補修、調査と清掃のように、同じ面の作業はまとめると割安になります。 - 見積書の「一式」を確かめる
作業ごとに数量と単価が書かれているかを見てください。打診で浮きが見つかった場合の撤去や補修は、実際の数量で精算するのが一般的です。
よくある質問
まとめ
ロープアクセスの費用は、作業ごとの単価に、ロープの設置・養生・監視員などの費用を足して決まります。1か所だけの補修や調査では足場よりはっきり安くなり、外壁全面の塗装のような広い工事では足場と同じくらいになります。どちらが向いているかは建物ごとに違うため、まずは写真と住所をお送りください。概算と、向いている工法をお伝えします。


