外壁を貫通して屋外に抜けているダクトの先が、フードも付かず、隙間もふさがれないまま開いていました。場所は7階建てビルの7階。直径10cmほどの穴です。足場を一切組まず、ロープアクセス(無足場工法)で貫通部を止水し、パイプフードを取り付けました。現場での作業は3時間ほどです。
穴ひとつのために、足場は組めない
前面は片側2車線の幹線道路で、歩道や隣接地には家もあります。そもそも目の前に足場は立てられず、前面は道路使用の手続きから始まり、組立と解体で数日かかり、費用も工事本体をはるかに超えます。
いっぽう工事そのものは、穴が4か所。ビスは数本です。
工事の規模に対して仮設が大きすぎる——これが、小さな高所工事がいつまでも手つかずで残る理由です。雨が入るのは分かっている、直したい、でもそのために足場を組むのは現実的ではない。そうやって保留になっている箇所が、多くの建物に残っています。

足場とロープアクセスの違い
- 足場・高所作業車 … 1か所だけの工事でも仮設一式が必要になる
- 前面道路に立てるなら、道路使用の手続きから始まる
- 組立と解体だけで数日。工事本体より長くかかる
- 費用の大半が「壁に手を届かせるため」に消える
- ロープアクセス … 屋上に支点が取れれば、その日のうちに降りられる
- 道路上に構造物を立てないので、前面道路が生きたまま作業できる
- 準備から撤収まで含めて半日で終わる
- 1か所だけの小さな工事でも成り立つ
施工の流れ
- 屋上に支点をつくる
建物の躯体側に支点を取り、作業用のロープとバックアップのロープを別々に下ろします。パラペットの角にはプロテクターを噛ませ、ロープが擦れないようにします。 - 7階まで降下する
目的の高さで止まり、体を固定します。両手が空いた状態をつくらないと、外壁の工事はできません。 - 取付位置の墨出しと下穴あけ
フードのビス位置を先に決めます。外壁はタイル張りなので、ビスをできるだけ目地に落とします。下穴は充電式のハンマードリルで開けます。 - 貫通部の止水
既存の穴とダクトの隙間に変成シリコーンを充填し、雨の入り口をふさぎます。 - パイプフードの取付
樹脂プラグを打ち、ステンレスのビスで固定します。ここで締めすぎるとプラグが空回りしたりタイルを割ったりするので、トルクはかけません。 - 周囲の清掃と撤収
施工箇所まわりの壁面を水拭きし、ロープを回収します。

施工前と施工後



この工事でいちばん気を使うところ
外壁のタイルは厚さ5mmほどの薄いもので、モルタルを介さず接着剤で貼られていました。ここに直接穴を開けると、割れて剥がれます。剥がれたタイルは7階から落ちます。
ですから、ビスの位置を先に決めます。フードの穴位置に対して、どのビスをどの目地に落とせるかを確かめてから降りました。目地はモルタルなので、タイルより安全に穴が開きます。
避けられずタイル面に開けるときは、タイル専用のビットを使い、打撃を止めて開けます。ハンマードリルの打撃はコンクリートには要りますが、タイルに対しては割るためだけに働くからです。
安全のこと
ロープは常に2本です。片方は体重をかけて降りる作業用、もう片方は万一に備えたバックアップで、それぞれ別に支点を取ります。1本が損傷しても墜落しない構成にするのが、ロープアクセスの原則です。


